研究計画書作成のポイント
<何のためにあるのか?>
受験生の多くが頭を悩ますのが、研究計画書です。自分は何をこれから研究するのか、ということを書くわけですが、大学院の側から見て何のためにあるのかを考えて、合格する書類を書くためのヒントにしてみましょう。
研究計画書のテーマは、指導教授の決定と深く関わります。いくら素晴らしいテーマを挙げても、志望した研究科・専攻に指導できる教授がいなければ、教える人もいない、この大学院に来る意味もないということで対象とされなくなります。志望校の決定とも関わりますが、この点は特に注意しておきたいところです。
また、研究計画書の内容からは、大学側は熱意と能力とを推し量るということを忘れてはいけません。
熱意というのは、研究にかける熱意で、いかにやる気があるかということです。能力というのは、大学院の授業についていくことができるのか、貢献することができるのか、修士論文を書き上げることができるのかということであり、それらに必要な論理力や文章構成能力のことを指します。
つまり、「研究計画書」によって大学院側が見ていることは
・この大学院で学ぶ意味がある学生か?
・やる気のある学生か?
・ある程度の研究業績を積み上げられる学生か?
ということになります。
以上の点を忘れずに、研究計画書を作成していく必要があります。
<研究計画書作成の準備>
では、「研究計画書」作成の準備として、何をしておくべきでしょうか?
● 関連文書を読む
まず、自分の研究したい領域の関連文書を読んでおかなければなりません。この点を怠ると、自分の研究しようと思っていたことが、実際はもはや結論が出ていたということや、独創性あふれる新しい学説が出せたとしても、素人の単なる妄想程度になってしまうこともあるからです。
自分の研究したい領域の一般書籍・専門書籍はもちろんのこと、学術雑誌にも目を通し、自分の研究対象分野の動向は必ず押さえておく必要があります。そうすれば、他の領域との関わりや研究の流れなども確認できますし、今よりも、もっと内容の充実した研究テーマが見つかる可能性もあります。それに、研究テーマがまだはっきりと決まっていない人も、ヒントが見つかって、方向性が見えてくることもあるでしょう。
志望理由書も研究計画書も論文の一種です。論文と作文の相違は当然のことですが、ここでもう一度見直しておかなければなりません。論文が作文と異なるのは、論文には構造性が存在するという点です。テーマは客観的に展開させていくものです。特に研究計画書は、①問題・目的(先行研究)②方法③仮説④意義・成果の4点を論証していく説得論文と見なす必要があります。すなわち、論理の展開がしっかりと存在していなければならないのです。社会人の方や他学科出身の方(通信の方は特に)はどう書いていいのかイメージがわかず、なかなか論が進展していかないこともあるでしょう。まずは、先人の書いたもの(先行研究)を考慮し検討しながら、論文の書き方を吟味してみてください。日本編入学院では、過去の受講生が残していった研究計画書の膨大なデータも用意されています。この種のデータも大いに利用しながら、ぜひがんばって自分自身の独創性あふれる研究計画書をつくってみてください。
研究
大学院は基本的に「研究」の場です。最近では高度職業人の養成なども教育目標として掲げる大学院が増えていますが、やはり主体となるのは「研究」です。
まずは「研究」の場で誰が主人公であるかを考える必要があります。もちろん、研究者(のタマゴ)である大学院生ですね。特に博士前期(修士)課程の場合、院生は一人前の研究者とは見なされませんが、それでも自分なりに研究を進めていく必要があります。この際、教官はあくまでその「指導」をするという立場であり、研究の主体はあくまで院生なのです。
よく「研究」と「勉強」をしっかり区別してください、ということを研究計画書指導で言われますが、これは「能動的」と「受動的」の区別と言ってもよいでしょう。「研究」は院生自らが能動的に行い、必要に応じて教官の指導を仰ぐもの、「勉強」はどちらかと言えば人(この場合には大学院の教官)から教わるもの、というイメージでとらえるとよいでしょう。研究計画書の大前提として、内容が「研究」主体であることが求められるのが普通です。
また、研究」についてもう1つ注意すべきであるのが、「何か新しいものを学問の世界に加える」という点です。研究と呼ぶ以上は、その内容が学問の世界に対して何らかの貢献をするものでなければならず、通常この「貢献」とは、新たな知見を付け加えるものだと解釈できます。
もちろん、特に博士前期(修士)課程の研究で、これまでにないまったく新しい知見、たとえばまったく新しい理論的枠組みを提示することは不可能でしょう。それでもやはり、何らかの「新しさ」は必要です。たとえば事例研究の場合には「研究手法」と「研究対象」の2つの関係が重要であるわけですが、この組み合わせが新しい(=今までにない)ことが少なくとも必要となるでしょう。
これから派生して問題となるのが、先行研究のリサーチです。自分がやろうとしていることが何らかの点で「新しい」ものであることを確かめるには、すでに他の人がやっていないことを確認しなければなりません。そのためには、当該分野の先行研究をリサーチすることが必要不可欠であるわけです。
つまり「研究」というキーワードから研究計画書を考える場合:
1. 院生自身が主体的に進めるものだという認識に立脚しており、
2. 何らかの新しい知見を付け加えようとする姿勢が感じられ,、
3. 先行研究のリサーチがきちんと行われている
ことが大切だと言えるでしょう。
計画
前回は「研究」というキーワードについてお話ししたので、今回は研究計画書のもう1つのキーワードである「計画」について考えることにしましょう。
言うまでもなく、研究計画書は「研究」の「計画」を述べるものですが、どの程度具体的に述べればよいかはけっこう悩むところではないでしょうか。かなり詳細な記述を求めるものとして、神戸大学経営学研究科の例を見てみましょう。この研究科の研究計画書は全体の字数もかなりのものですが,「研究実施計画」として20行分の記述を要求しています。「記述指示には上記研究課題の各項目を実施する為にどのような研究活動をどのような日程で進めてゆくか、具体的に述べる事」とあり、かなり具体的に書く必要があります。実際に合格した方の計画書では,まずは調査が必要な項目を述べ、具体的な調査方法を各項目について述べた後、修士課程在学期間を5期程度に分け、それぞれの期間に行うべき調査・研究の内容を記述しています。この程度まで具体的な記述が必要だと考えてよいでしょう。
ここまで詳細な記述を求めるケースはそう多くはないにしても、「研究計画書」である以上、当該研究をどのように進めるかについて、一定の「計画」は示さなければなりません。研究計画書の記述にあたっては「何を」「どのように」研究するかを常に念頭に置かなければなりませんが、「計画」部分は「どのように」に主に関係すると言ってよいでしょう。少なくとも、当該研究を遂行するためにどのような文献を参考にし、どのような調査を行えばよいかについて、ある程度の見通しは立てておく必要があるわけです。
研究計画書で大学院が見きわめようとしているのは、実行可能性のある研究計画が立てられるかどうかです。また、そのために必要な一定の基礎能力や知識・理解が備わっているかどうかも検討の対象となっていると言えるでしょう。「これが研究したい」という研究テーマがある程度定まっていても、それを本当に「研究」と呼ぶにふさわしいものに高めるためには、実行可能な計画が伴っていなければなりません。作成・提出しなければならない書類が研究「計画」書である点を、常に考えながら書き進めてほしいものです。
先行研究
大学院入試の「研究計画書作成指導」でよく問題になるのが、今回とりあげる「先行研究」です。ミニ・カウンセリング説明会でも何度か説明していますが、先行研究に言及しない論文というのはありえず、論文作成を最終目的とする大学院の研究の計画書においても、当然ながら先行研究に言及する必要があります。
とはいえ、特に社会人入試の場合には、学部レベルでは異なる分野を専門にしていたので、「先行研究」などと言われても困る、という声もあります。しかし、何も先行研究というのはそう高度に専門的なものばかりであるとは限りません。たとえば、ある分野を研究しようと思い立つときに、何か本などを読んだのではないでしょうか。それは一般的解説書であったかもしれません。しかし、そこからさらに興味を持った文献を読み進めなかったでしょうか。それはすでに、少なくとも広い意味では「先行研究」と呼べるものです。もし一般解説書を読んだだけ、あるいはそれすら読まずにただ「おもしろそうだから」という理由だけでテーマを決め、研究計画書を書こうとしているのであれば、少し考え直した方がよいでしょう。
当然、テーマに関連して読んだものすべてが「先行研究」となるわけではありません。自分が取り上げようとしている題材と同様のものを扱っている研究、研究方法を参考にしようと考えている研究、自分がさらに精緻化しようとしている理論を提示している研究、反論を加えようとしている研究など、自分の研究に直接関係し、何らかの「視点」を与えてくれる研究が先行研究なのです。
大学学部レベルの卒業論文執筆で、指導教員の多くは「まずは先行研究のレビューから始めてみなさい」といった指示を出します。実際このように指示された経験のある人も多いでしょう。こうした指示がなされるのは、先行研究を読むことが「研究」の出発点となるからです。先行研究を読みながら、当該分野でどのようなことが問題となっており、それをどのような観点から研究しているのか、また、当該分野で妥当だとされる研究方法はどのようなものなのかなど、研究を進めていくうえで必要な知識・理解を与えてくれるのが先行研究なのです。
先行研究などほとんど読んでいないという人は、まずは良質の概説書を読むことから始めてみましょう。良質な概説書は、単に理解しやすいだけでなく、そこで扱っている内容について興味を持った読者が次に読むべき図書・論文をリストとして示してくれます。特に親切なものは文献解題もついています。このような良質の概説書を読み、自分の興味がどこにあるのかを確かめながら、次に読むべきものを探っていくとよいでしょう。
ただ、一般の公立図書館などで入手できる文献ばかりがとりあげられているとは限りません。専門誌や論文集、あるいはかなり専門的な図書など、大学図書館でなければ入手しにくいものもあるでしょう。社会人など大学と直接関わりを持たない人でも、国公立大学を中心に、研究目的に限って閲覧許可がとれる場合が多いので、利用してみるのがよいでしょう。貸出はできない場合がほとんどですが、必要な手続きをとれば館内に設置されているコピー機で文献を複写することができます。
先行研究に適切に言及することで、おおよそ同じ内容の研究計画書でもずっと深みが増し、研究の実行可能性を感じさせるものとなります。それに、すでに述べたとおり,先行研究を読んで内容を整理することは研究の第一歩でもあります。
最後になりますが、必要な先行研究を探っていくうちに、ほぼ必ず翻訳されていない外国語の文献が入ってくるはずです。多くの分野では英語文献ということになると思います。このことからも理解されるように、本格的な研究を進めていくうえで外国語の読解力は必要不可欠です。外国語の文献を読む必要が生じたら、あきらめるのではなく積極的に挑戦してみましょう。
研究方法
研究計画書においては、研究テーマの概要や先行研究についてはもちろんのこと、研究方法についても言及することが必要です。これについてどれだけ具体的に書けるかで、研究計画書の良し悪しが決まると言っても過言ではありません。
まず、自分が行おうとしている研究で何を明らかにしたいのかを、ある程度具体的に考える必要があります。多くの場合、研究計画書執筆の最初の段階では、漠然としたテーマ設定はできていても、そのテーマについて、具体的に何を明らかにしようとしているかまでは考えていない場合が多いのです。これでは単に「このテーマについて勉強します」ということしか言えません。残念ながら、このレベルにとどまっていては研究計画書としては認められないのです。
具体的に何を明らかにするかが明確になったら、次に考えるべきなのがその際の方法です。まずは、自分の研究が理論構築ないしは理論の修正を中心とするのか、事例研究となるのかを見きわめましょう。実際には、特に修士課程レベルで1から理論を構築するのは難しいので、前者の場合には理論の修正ということになるでしょう。この場合、どのようにして理論の不備を指摘するのか、また、どのようにすれば理論の不備を突いたことになるのかを考えてみてください。そして、このために具体的に必要な作業を洗い出していくわけです。続いて代案を提示することになるわけですが、代案を構築するためにはどのような作業が必要かを考えなければなりません。さらには、代案と元の理論を比較する場合の基準や、代案が優れていることをどのような尺度で示すかなどについても考えるとよいでしょう。
事例研究の場合には、まず対象となる事例を決め、その事例のどのような側面を研究対象とするかを、何を明らかにしたいかとの関係で検討していく必要があります。この場合に注意しなければならないのは、純粋な事例研究というのはきわめて成立しにくいということです。単に事例を検討していくだけでは、ルポルタージュになっても研究とはなりにくいものです。それ故、事例研究を行う場合にも、類似の対象を扱った先行研究を参考にしながら、ある程度理論的に研究を進めていく必要があります。現実を虚心坦懐に観察するということではなく,理論という「視点」をふまえて研究方法を検討していく必要があるわけです。
特に、事例研究は、現職者ならば有効な方法でしょうが、一からの素人の状態から大学院入試に挑戦する場合は、あまりお勧めできません。何ら実績的な裏づけがないからです。
また、2つ以上の対象を比較研究するという場合もあるでしょう。この場合には、単に「AとBを比較する」というだけにとどまらず、比較すべき視点を明らかにし、比較の際の尺度・基準を、できるかぎり先行研究に求めていく必要があると考えられます。
研究成果の利用
研究計画書の記述指示において、「研究成果の利用」について述べることが要求される場合があります。また、特に述べるよう指示がなくても、社会人の場合には修了後の進路希望と研究の関係について、ある程度述べておくことが重要でしょう。
この項目はあまり重視しない人も多いと思いますが、実はここの書き方から研究に対してどの程度具体的なイメージが持てているかがわかる場合も多く、おろそかにはできません。たとえば「この研究の成果を生かして○○の業務をさらに続けていきたい」などというのは、書かない方がまだましというものです。ほとんど何も言っていないのに等しいからです。
それではどのように書けばよいのでしょうか。とりあえず、3つの項目について考える必要があるのではないでしょうか。第1に研究によって自分がいちばん得られるものは何か、第2に自分は修了後にどのような道を選ぼうと思っているのか、そして第3に両者がどのように結びつくのかです。
もう少し詳しく見ていきましょう。まず第1の項目ですが、これは必ずしも研究の意義や目的と一致するわけではありません。というのも、研究の意義や目標というのはあくまで学問的見地から見た場合の話であるのに対して、ここで述べるべき「自分がいちばん得られるもの」は「自分」としての話だからです。もちろん、この2つがはっきり分かれる場合ばかりとは限りませんが、この2つが基本的には違うものであることは、きちんと意識しておく必要があります。
第2の項目はそう問題はないと思いますが、漠然と書くのではなく、特に研究と関係の深い点についてきちんと述べることが大切です。第3の点についてですが、ひとつの考え方として、この研究をした後の自分と、研究をする前の自分とで、同じことに取り組む場合でどう違うかをイメージしながら書くとよいでしょう。簡単に言うなら、この2つの自分の「差」が研究で得たものの活かし方であるからです。
研究者を目指すのであれば、これはもう「一生研究」ですから、この項目を書くのはそう苦労しないでしょうし、そう問題にもならないでしょう。しかし社会人の場合には、研究を通して何かを得て、それをその後の職業生活などに活かすことが大切なのです。ただ「勉強したい」では通りません。この点を十分に認識し、しっかり考えながら書くようにしたいものです。
研究計画書提出直前チェック
自分で書いた研究計画書がきちんとしたものになっているのかどうか、不安に感じている方も多いと思います。そこで提出直前の研究計画書をチェックする際のポイントをお話しすることにしましょう。
研究テーマは明確に設定されているか?
研究計画書で何よりも大切なのが、研究のテーマです。研究テーマの書き方自体は様式がいろいろありますが、どんな様式のものであっても、研究テーマを明示することは必要不可欠です。
研究題目として書くことが求められている場合には、単に「○○について」といったものは避け、研究対象と研究方法を組み合わせた「○○の××的研究」といった形にするのがよいでしょう。場合によっては副題を付け加えてもよいでしょう。
「研究概要」といった記述指示になっている場合も多いようです。このような場合には、テーマそのものを説明することを心がけてください。研究分野の概略などをだらだらと述べている計画書を見かけますが、そんなことは読み手(つまりは大学の教員)にはわかりきったことである場合が多く不要です。自分が研究しようとしていることが何かを明確に述べましょう。
本当に研究「計画」書であるか?
何度も取り上げている重要項目ですが、残念ながらここがきちんとしていない計画書が多いのが実情のようです。
研究「計画」書である以上、研究の計画が中心を占めるべきで、研究の現状を延々と述べたものは研究計画書とは言えません。自分が設定したテーマをどのように料理していこうとしているのか、読み手に明確に伝わるよう、研究計画を具体的に述べるようにしましょう。
どの程度の具体性が必要なのかがよくわからない、という人もいると思いますが、少なくとも研究に用いる理論や分析手法は明示しておくべきでしょう。単なる学習計画に終わらないように注意しましょう。
先行研究をきちんと挙げているか?
当該テーマの研究のための準備がどこまで進んでいるかを判断するうえでいちばんわかりやすいのが、どの程度の参考文献を読んでいるか、また読んではいないにしても、少なくともその存在を認識しているかだと言えます。研究テーマの設定や研究計画の記述で、先行研究から得た知見が必ずあるはずです。それらについては、きちんと該当する研究を挙げておきましょう。
また、きちんと読んでいない文献については、研究計画の中で言及し、その文献がどのように自分の研究に関連すると考えられるかについて説明を加えておくとよいでしょう。
なお、文献の挙げ方には各学問分野ごとにルールがあります。その学界を代表する学会誌に掲載された論文などを検討し、その形式を正確にまねるようにしましょう。
参考文献等
下の文献を読むだけでも、だいぶ違ってくると思います。時間がなくてもぜひ読んで、少しでもよい計画書を仕上げてください。
* 妹尾堅一郎『研究計画書の考え方-大学院を目指す人のために』ダイヤモンド社
* 「考える生活」の「文章力」ページ
* 日本編入学院のホームページ上の「合格者コメント」欄
志望動機
編入学試験では、ほとんどと言っていいほど志望動機書や志望理由書の提出が義務づけられています。そのため、参考にしようと小論文の書き方の本や他の本をいろいろ見られると思いますが、なかなか書き方が載っていません。私も当時困りましたが、皆さんもそうだろうと思います。そこで、私が情報を集めて、四苦八苦して書いた方法を下に載せてみます。参考にできたらしてみて下さい。
まず、書く字数ですが、これは大学によってまちまちです。H海道大学のように2000~3000字も書かなくてはならなかったり、K戸大学のように入学願書の一部分の欄に400字程度だけ書けばよかったりします。多分800字程度が一番多いと思われます。何を書けば良いかと言うと、自分には熱意があって、その分野にあった人柄・その勉強にむいた人材であることをアピールしなければなりません。そのため、一番書きやすい四部構成で書いていった方が良いでしょう。
<第一部>結論:全体の10%ぐらい
ここでは、「私は、○○をしたいために、△△大学を志望する。」とズバリ志望動機を書きます。目標としている職業・資格があれば、それをはっきり書くほうがよいと思います。
<第二部>きっかけ:全体の35%ぐらい
「子供のころ、ある体験をしてから、ずっと夢に見ていた」「テレビでその職業を知って、そのため勉強をしたいと思った」「短大で少し研究をしたので、この分野に興味を持って深く勉強したいと思った」など、ならべくありきたりでないきっかけを書きます。自分だけの心に響く出来事なら、さらに良いと思います。そして、出来事を書く場合は、どんなことが起こって、それについてどう考えたかを説明します。つまりできるだけ具体的に書きます。具体的な方がより現実味が生まれるからです。
<第三部>具体的にやりたいこと:全体の45%ぐらい
ここでは、具体的に大学のその学科で学びたい内容を書きます。はっきり言ってここで決まります。「○○の勉強をして、研究者になりたい」「農家になるための勉強をしたい」などの説明が好ましいです。ここで、学ぶことをしっかりと見定めていること、知識がきちんとあることを示すのがポイントです。気をつけなければならないことは、それを示さずに熱意だけ空回りすることです。そうならないため、自分が学びたいことがこれから先の社会にとっていかに大事かを書くと良いでしょう。また、将来像や、現在問題になっていることについて意見を述べてみるなんかも良いと思います。
すでに研究を行なっている人は、今までの研究内容を踏まえて編入してから具体的にやりたい研究について書いていけば良いと思います。そしてそれを書いた人は、面接や口頭試問や口述試験で詳しくその内容について聞かれることは覚悟しておきましょう。
<第四部>志望大学の良い点:全体の10%ぐらい
「○○先生のおられる△△大学が最適だ」「○○な環境の△△大学で学びたい」などの志望大学が自分の志望にあっていること、学ぶのに最適の場であって、講座や設備が整っていることを説明します。ただ、お世辞をべたべたと並べる文章は説得力がないです。大学内部の設備の充実度は問題面も含めて、中にいるものが一番良く知っています。それを褒められたところで、教授達は嬉しいものではありません。だから、大学を褒めるのは少しだけで十分です。
*注意点
段落変えを忘れない、「だ・である」調で書く、一文は短くする、流行語・会話体・略語は使わない、文章語を用いるということは常識なので気をつけて書きましょう。
鋭い文章を書こうとして、過激なこと、不真面目なことを書く恐れがあります。そういうのはダメで、やる気があって、真面目で、積極的、という態度を示す必要があります。
学ぶ内容ばかりを羅列するのは、読む方は安易さを感じてしまいます。一つか二つに絞って、できるだけ詳しく説明しましょう。
今の大学や学校などを否定しない方が良いです。今の環境では学ぶことに限界を感じて編入したい、というのが好ましいです。否定してしまうと、逃げていて消極的な感じがするからです。
専門的なことを書いた知ったかぶりの文章は危ういです。読む方は専門家なので、素人のくせにという感想を持ってしまいます。それに、あまりに高度なことを書くと、面接や口頭試問や口述試験で根掘り葉掘り聞かれるでしょう。ここは、学ぶ謙虚さを示しておいた方がよいです。
研究題目
研究計画書の読み手の立場からすると、いちばん目を引くのが「研究題目」です。多くの様式では表紙や冒頭部分に書くようになっているので、目にとまりやすいと言えるでしょう。
多くの受験生が犯す過ちが、この研究題目を最初に決めてしまい、その後ほとんど再検討しないことです。研究題目は研究計画書全体のエッセンスなので、順序から言うと他の部分がすべて完成してから最後に確定すべきものです。と言っても、ある程度の「仮」題目は決めておいたほうがよいですが、あくまで「仮」にしておくべきでしょう。
研究題目は大きく2つの部分から成り立っていると言ってよいでしょう。1つは「研究対象」、もう1つは「研究方法」です。この2つは研究計画書の中核であるべきで、研究題目もこれをまとめたものが望ましいわけです。ごく簡単なひな形を示すとすれば「[研究対象]の[研究方法]的研究」となります。これを基本にして詰めていくのがよいでしょう。また、場合によっては副題をつけることも考えてよいですね。副題では、たとえば研究の具体的な視点を示します。ただし、題目に対して字数制限が設けられている場合もあるので注意が必要です。
また、題目が漠然としすぎていないかどうか、注意が必要です。どの程度の具体性があればよいのか迷う場合もあると思いますが、修士論文の題目集(公式サイトで公開されていたり、冊子として図書館に置いてあったりします)なども参考にしながら、簡潔にして具体的(難しいですが)な題目を考えるようにしたいものです。
研究概要
日本編入学院の研究計画書作成指導に寄せられる計画書で、問題点が多いのがこの「研究概要」の部分です。指示を素直に読めばそう間違えることはないはずなのですが、実際には指示とかなりずれたことを延々と述べる人が多いのが現状です。
「研究概要」とは、設定した研究テーマについて、どのような研究を行うのかを簡単に述べるものであるはずです。つまり、「研究」の「概要」を述べるものであるわけです。しかし多くの人が、自分が研究を行うにいたった経緯や、問題点の羅列に終始してしまうのです。問題点を挙げることはたしかに必要ですが、それはあくまで自分が行おうとしている研究との関連で挙げなければなりません。また、個人的な経緯についても、記述の中心となるものでないはずです。
それでは、どのように考えていけばよいのでしょうか。ごく簡単に言えば、短くまとめた研究題目(研究テーマ)を、一定の字数で説明するということになります。たとえば、題目に含まれる用語で複数の定義があったり学者によって理解が異なったりするもの、明確にする必要があるものについて簡単に定義したり、研究で用いる枠組みを簡潔に提示したりするのがよいでしょう。対象についての説明も必要な場合があります。つまり、「何を」「どのように」研究するかを題目との関連でより具体的に提示していくことになるわけです。このうち特に「どのように」については、研究計画部分でさらに具体的に述べていくことになります。
また、読み手のレベルを明確に設定することも大切です。研究計画書を読むのは、大学院で指導を担当する教員です。したがって、必要以上に詳しくならない(初心者を想定しているかのように)必要があります。だからといって、専門知識をすべて持っていると想定するのも問題です。複数の教員が研究計画書を読む場合、分野の異なる教員も読むことになる場合があるからです。もちろん、これは研究概要の部分に限った話ではありません。
研究の枠組み
本格的な研究を目指していると感じさせる計画書であるかどうかを分ける特徴のひとつが、「研究の枠組みに言及しているかどうか」です。大学院への進学を希望している人であれば、自分が何をやりたいかは少なくともある程度書くことができるでしょう。しかし、すでにこの連載でも解説しているとおり、それだけでは「研究計画書」にはなりません。大切なのは、学問分野の中でやりたいことを位置づけることです。
これが研究の「枠組み」です。まずは自分のやりたい研究がどのような学問分野に位置づけられるのかを考えましょう。もちろん、考えた結果として既存の学問分野に位置づけることが難しいという結論に達するかもしれません。しかし、この結論にいたるためにはやはりこの思考作業が必要です。また、既存の学問分野に位置づけられないとしても、複数の学問分野を融合する形で研究を進めていくのが普通なので、こうした意味でも自分の研究の位置づけは大切な作業です。
基本的にはこれをどんどん掘り下げていくことになります。まずは「○○学」(たとえば言語学)に位置づけたとして、次はその下位分野,「××○○学」(たとえば社会言語学)ないしは「××論」(たとえば意味論)に位置づけていきます。この作業を進めていくなかで、当然ながら文献を読み進めていくことになります。最初は自分の扱いたいトピックに関する本を読むことになると思いますが、そこからそのトピックを含む学問分野の概説書、その下位分野の概説書と読み進めていくのがよいでしょう。
そして最終的には、そのトピックを対象とする先行研究にたどり着くことになります。一人の研究者にたどり着くこともあれば、同じ枠組みを共有する「流派」にたどり着くこともあるでしょう。いずれの場合にも、その研究者(たち)の研究の進め方が「枠組み(フレームワーク)」ということになります。研究を進める上での基本的な考え方、対象のとらえ方、理論的な立場のことだとかんがえればよいでしょう。これを明示することによって、計画書の説得力はずっと増し、本当に実行可能性のある研究だという印象を与えることができるのです。